海外臨床実習報告 イギリス・カーディフ大学

海外臨床実習報告 イギリス・カーディフ大学
               三重大学医学部医学科6年穴太智子

 2024年4月8日から5月3日までの4週間、海外臨床実習として、イギリス・カーディフ大学で病院実習を行いました。
 私が海外エレクティブを希望したきっかけは高校1年次にオーストラリアで病院見学をしたことです。高校生ながら、救急車の色さえも異なる世界の医療の多様性に驚き、オーストラリアには総合診療医GP制度という日本とは異なる医療制度があることを知り、「今度は医学生として、臨床実習という形で病院実習をし、海外の実際の現場で医療を学びたい」という目標ができました。新型コロナ感染症拡大などもあり、留学から遠ざかる日々が続きましたが、昨年海外実習が再開し、三重大学を訪れたカーディフ大学の医学生と交流する中でカーディフ大学での実習に興味をもち、GP制度が根付くイギリスで医学英語を学びたいと、カーディフ大学での実習を希望しました。また自分の興味のある科を選択できることも大きな魅力でした。実習では、興味のあった免疫内科と眼科を2週ずつ周りました。 
 最初の2週間は免疫内科を回りました。カーディフ大学では、膠原病内科や内分泌内科とは独立して、免疫不全症やアレルギーを専門とする免疫内科があり、本学免疫学研究室で研究室研修をしている私にとって、日本では珍しい、臨床科として独立した免疫内科を学ぶ貴重な機会となりました。Stephen Jolles教授にご指導いただき、外来やミーティング、免疫グロブリン療法に参加し、免疫不全症やアレルギーについて学びました。              
免疫不全症というと小児の時期に感染を繰り返すような印象があったのですが、免疫内科では免疫グロブリン療法やレスキューパック(感染が起きた時のための抗菌薬)のような、感染を起こさないようための予防措置が主な治療として行われていました。GP制度をもつイギリスでは、ミーティングの中でも総合診療医GPとの連携が話題になっており驚きました。CVIDや低γグロブリン血症など様々な免疫不全症について学び、免疫グロブリン療法や外来の中で実際に患者さんとお話しして、大人になってから発症するケースや2次性に免疫不全症を発症するケースもあることを学びました。また非常に稀なX連鎖リンパ増殖症候群XLP1の患者さんとそのご家族に対して、検査前の同意取得と説明の段階から、ミーティング、フローサイトメトリーの検査結果、免疫グロブリン療法のトレーニングの様子、診断までの一連の流れを追うという経験をしました。XLP1のように、先天性免疫不全症で用いられる遺伝子検査は結果が出るまでに数ヶ月かかるため、研究でよく用いられるフローサイトメトリーが、免疫不全症の原因探究と迅速に治療方針を決める上で非常に重要であることも知りました。免疫内科では、研究と臨床の内容が密接に関わっており、研究と臨床の両方に興味がある私にとって非常に興味深い実習でした。またStephen Jolles教授を含め、医師や看護師、後期研修医の先生方など免疫内科チームに暖かく迎えていただき、充実した実習となりました。
 後半の2週間は眼科を回りました。様々な分野で外来見学と手術見学を行いました。日によってそれぞれの分野の専門の先生につく形式で実習をし、白内障・緑内障・網膜疾患などについて、術前の外来・検査から手術、術後のフォローアップと一連の流れを学ぶことができたと同時に、ぶどう膜外来、遺伝外来や小児眼科外来などの幅広い分野に触れることができました。ぶどう膜炎外来では、サルコイドーシスやHLA B27関連疾患のほか、若年性特発性関節炎JIAや感染性など様々な原因のぶどう膜炎の所見を細隙灯顕微鏡検査を用いて学び、前房蓄膿の所見による鑑別や画像上の違いを実際に見ながら、患者さんから直接お話を聞くことができ、大変勉強になりました。白内障手術では、術前の診察から執刀医の先生について見学し、細隙灯顕微鏡検査で患者さんの目を見た後、手術室で1対1で教えていただき、顕微鏡で執刀医の先生と同じ景色を見学する非常に貴重な機会を得ました。手術は他に、緑内障に対する線維柱帯切除術やレーザー手術、網膜硝子体手術、眼科形成手術を見学しました。また遺伝外来では、Marcela Votruba教授の下で、Leber遺伝性視神経症、ミトコンドリア症MERRFなどの症例を見学し、眼科疾患モデルマウスのラボミーティングへの参加や人工角膜ハイドロゲル移植について講義を聞く機会を得ました。三重大学学生海外チャレンジ応援事業の一員として、昨夏、幹細胞再生医療センターでhiPS細胞の培養や分化を学んだ私にとって、実臨床での再生医療への応用やその内容に関する研究の講義を聞く非常に貴重な機会となりました。
 本実習で非常に多くのことを学び、経験し、充実した臨床実習となりました。このような素晴らしい機会をいただきましたこと大変感謝申し上げます。今回の留学に関して、ご協力いただきました形成外科の成島先生、山田様、カーディフ大学Emma様およびご支援いただきましたトビタテ留学JAPANの皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。そして留学先でご指導いただきました皆様を含め、多くの学びと出会いに感謝申し上げます。今回学んだことを将来に繋げ、今後も引き続き実習に取り組み、より良い医師を目指し、一層努力を重ねたいです。