【JICA】感染症早期警戒対応能力強化プロジェクトの一環で、インドネシア保健省のスタッフが医学部附属病院で研修を受けました


 2023年度JICAにおけるインドネシア国「感染症早期警戒対応能力強化プロジェクト」の一環として、2023年6月19日(月)、医学部附属病院・感染制御部のスタッフが、インドネシア保健省のスタッフ10名を対象に、「三重大学医学部附属病院における感染症サーベイランス」の講義を行いました。
 本プロジェクトは、インドネシアにおいて、感染症サーベイランスを強化するため、同国保健省のスタッフが、3週間程度、日本を訪問し、国立感染症研究所(東京)のほか、三重県、大阪府、広島県などで、日本の感染症サーベイランスの現状を学んでいただくコースとなっています。
 三重県は、県内全域を対象とした感染症の地域ネットワーク「三重県感染症対策支援ネットワーク(MieICNet)」を構築し、行政機関と医療機関が連携して感染症対応を行なっている地域であるため、その事務局を担っている三重大学病院が研修先の1つとして選定されました。当院における研修では、(1)病院内の感染症サーベイランス、(2)地域の感染症サーベイランスについて講義を行いました。
(1)病院内の感染症サーベイランスとして、
 ①感染症経路別予防策が必要な感染症サーベイランス(ICT活動)
 ②耐性菌サーベイランス(ICT活動)
 ③広域抗菌薬使用サーベイランス(AS活動)
 ④血液培養サーベイランス(AS活動)
 ⑤手術部位感染サーベイランス(SSI)
 ⑥デバイス関連サーベイランス(CLABSI・CAUTI・VAE)
 ⑦手指衛生モニタリング
など、感染制御部において日常的に行なっているサーベイランスについて、その目的、データ収集の実際、フィードバック方法などについて説明しました。
(2)地域の感染症サーベイランスとして、
 ①感染症法に基づく届出
 ②厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)
 ③三重県感染対策支援ネットワーク(MieICNet)
 ④感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)
など、三重県や日本で行われている感染症サーベイランスについて、病院からはどのようにデータを抽出・提供し、またその結果をどのように活用しているかなどを説明しました。
 3時間の講義のまとめとして、以下のようなメッセージを伝えました。
 日本の感染症サーベイランスもまだまだ発展途上ですが、この10年程度の間に、感染症対策の地域連携が進み、病院内でのサーベイランスから、地域全体でデータを共有する体制が構築されるようになりました。また、COVID-19への対応を受け、感染症法に基づく届出が、手書きで記入しFAX送信する形から、電子的入力へ移行するなど、感染症データのあり方について変革期にあります。
 英語で作成したスライドを日本語で説明し、通訳を介してインドネシア語に翻訳されながら講義をするといった貴重な経験ができました。インドネシアはカルテの電子化もあまり進んでいないようでしたので、今回の日本の視察を通じ我々の経験を共有することで、インドネシアにおいて、よりよいサーベイランス体制が構築されることを期待しています。

(プロジェクトの内容について)
【JICA】感染症早期警戒対応能力強化プロジェクト(Project of Strengthening Capacity for Early Warning and Response to Infectious Diseases
 インドネシアでは、感染症サーベイランスの強化を目的に、2009年から感染症の早期警戒警報対応システムの導入を開始しました。早期警戒警報対応は、感染症対策、特にアウトブレイクの初期段階での迅速対応実施の基礎となるため、その強化が急務となっています。JICAでは、2021年6月〜2025年6月にかけて、技術協力を行っています。同国保健省の感染症サーベイランス能力の強化及び対象州における感染症サーベイランス強化のための方策の特定・試行・検証を行うことにより、対象州における感染症サーベイランスの強化を図り、同国の感染症サーベイランスの強化に寄与します。
(出典) https://www.jica.go.jp/oda/project/1701881/index.html
(附属病院感染制御部 田辺正樹、髙橋佳紀)