着任のご挨拶

三重大学医学部附属病院
乳腺センター
河口 浩介

 2024年1月1日付にて三重大学医学部 附属病院 乳腺センターの教授を拝命しました河口浩介と申します。これからの三重大学並びに三重県における乳腺診療・研究・教育に貢献すべく取り組んで参りますので何卒よろしくお願い申し上げます。私は三重県伊勢市の出身で、三重中学校・高等学校を卒業しております。このような形で生まれ育った故郷に戻る機会を頂いたことに深く感謝を致します。

 これまでの経歴ですが、医師免許取得後に日本赤十字社和歌山医療センター・大阪赤十字病院・京都大学にて外科及び乳腺外科医として研修を積ませて頂きました。当時関西には乳腺のみを専門とする医師が非常に少なかったため、乳腺専門でこの先のキャリアを形成することに周囲から非常に珍しがられました。その後京都大学の大学院に入学し、腫瘍免疫の研究に励みました。大学院入学時に免疫チェックポイント阻害薬がトレンドになり始めた頃であり、非常に良いタイミングで良い研究生活を送れたと思っております。

 研究面におきましては、医学生時代から留学に非常に興味があり、しつこくインタビューを受けに行かせていただき、ハーバード医科大学・マサチューセッツ総合病院の腫瘍生物学講座Rakesh Jain博士の研究室に留学することができました。Jain先生は腫瘍免疫微小環境研究において世界をリードする先生でしたので、留学2年間はひたすら寝る間も惜しんでマウスとヒトの腫瘍免疫微小環境の解析を行いました。乳がんにおける運動と食事が腫瘍免疫微小環境に与える影響や、がんの新規武装抗体開発、一酸化窒素が腫瘍免疫微小環境に与える影響など、がん種横断的に取り組むことができました。

 留学後、京都大学に帰学してからは、留学時代に身につけたin vitro, in vivo実験を中心に大学院生と共に乳がんの腫瘍免疫微小環境研究に取り組みました。また、臨床試験グループにおいてトランスレーショナル研究を担当し、研究代表として産学連携での研究を進めてまいりました。また、京都大学・協力施設における乳癌組織・臨床情報バイオデータバンクの設立・運営に主体的に携わってきました。現在では5000症例以上の規模となり、国内外の横断的な研究体制の基礎となっています。今後は、三重大学においても組織バンクの利点と欠点双方を経験している観点から、より利便的で柔軟性のある乳癌組織・臨床情報バイオデータバンクの構築と整備に貢献ができればと思っております。

 診療体制については地域医療と大学の連携を推進し、高い水準の治療を地域に根ざした形で提供することを目指します。三重大学医学部附属病院乳腺センターでは、初代教授である小川教授のもとで整容性の高い手術手技が確立されており、その実績を活かしながら、今後は集学的治療における地域医療と大学の連携推進に注力したいと考えています。患者さんにとって最善の治療が提供されるよう、大学病院としての役割を果たしていくことに全力を尽くしたいと考えています。

 研究、教育、臨床の各分野でのこれらの取り組みを通じて、大学病院が地域医療において中心的な役割を果たし、国内外の研究者や医療従事者と連携して、乳がん治療をはじめとする患者の予後や生活の質の向上に貢献できることを目指します。そして、これらの取り組みを広く社会に発信し、他の地域や病院にも参考となるようなモデルケースを提供することで、県内のみならず全国的な乳腺医療の質向上に貢献していきたいと考えていますので、どうぞご助力ご指導の程何卒よろしくお願い申し上げます。