三重大学医学部産科婦人科学教授就任のあいさつ
三重大学大学院医学系研究科産科婦人科学
近藤 英司
令和7年1月1日付けで三重大学大学院医学系研究科産科婦人科学教授を拝命致しました近藤英司と申します。産婦人科は周産期、婦人科腫瘍、高度生殖医療、女性医学からなる領域で、女性の健康を支える診療科です。当教室は1945年(昭和20年)4月14日に田北鎮吉氏が三重県立医学専門学校の附属病院、初代産科婦人科学教室教授に就任から始まり、約80年の伝統ある教室です。
本邦1位の周産期死亡率(2019年)を達成した周産期分野、大学病院でのロボット手術件数1位の婦人科分野(2018~2020年)、卵巣凍結については人口10万人あたりの実施件数として国内で1位に生殖内分泌分野、それぞれの特徴を進化させながら、三重大学ならびに三重県の産婦人科領域の臨床、研究、教育に患者様に対してよりよい医療が提供できるように邁進してまいります。
私は桑名市出身であり、三重県立桑名高等学校を卒業し、平成2年に山口大学医学部医学科に入学しました。平成8年に卒業後、外科系の腫瘍と手術療法と周産期医療に興味があり、どちらもできる産科婦人科学を志しました。
平成16年に当時の三重大学産科婦人科学講座のテーマである妊娠糖尿病に関する研究で学位を取得いたしました。アディポサイトカインが注目され始めたばかりで妊娠末期マウスの腹腔内脂肪細胞のアディポネクチンの発現が低下しておりインスリン抵抗性との関与を明らかにしました。周産期の研究とともにもともと興味があった手術療法、特に低侵襲手術(Minimal invasive surgery: MIS)は女性患者を対象とするので産婦人科においてさらに発展することが予想され、いち早くから取り組みました。これまで私は、三重大学とその関連病院およびがん研有明病院(2013年~2016年、婦人科医長として勤務)において、手術責任者として延べ27年間で3000件以上に及ぶ婦人科悪性腫瘍手術および内視鏡手術に関わって参りました。特に最先端医療であるロボット支援下手術、腹腔鏡下子宮頸癌・子宮体癌・卵巣癌根治手術の導入を行ってきました。婦人科疾患に対する三重大学産科婦人科のロボット手術症例数は、全国のハイボリュームセンターの中でもトップクラスです。
つぎに周産期分野について述べさせていただきます。三重県の出生数は、2022年7月からの1年間で累計10,770人であり、2021年の同時期の出生数11,705人を比較すると年間8%減少しました。さらに昨年2024年は10,000人を切り、さらなる少子化問題となってきています。また、2024年から導入される働き方改革も大変重要な問題です。分娩の保険適用化に柔軟に対応し、24時間対応可能かつ安全な無痛分娩を提供することで、少子化の時代にあっても分娩数を減少させることなく運営し、県民の安心・安全はお産を運営してまいります。以前からの東紀州問題に加え、伊賀・名張地域の周産期の統合など早急に対策が必要です。この問題に関しても市町・県などとしっかりと対応していきます。
高度生殖医療もがん生殖を積極的におこなっており、がん診療連携病院、小児がん拠点病院、がん医療ゲノム拠点病院のすべてを取得している病院は少なく、さらに卵巣凍結や卵子凍結を施行できる施設は当院を含め全国的に少ない状況です。最先端の医療が三重県民の方々が受けられるように努めていく所存です。
最後になりますが、三重大学および三重県の医療に少しでも貢献できるよう、また人材の育成にも努めさせていただきます。皆様方のご指導、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。