三重大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学教授就任のあいさつ

耳鼻咽喉・頭頸部外科学
柴田博史

【略歴】
2009年 岐阜大学医学部医学科 卒業
2011年 岐阜大学医学部 耳鼻咽喉科学教室 入局
2013年 京都大学iPS細胞研究所 特別研究学生
2019年 米国ハーバード大学ダナファーバー癌研究所 リサーチフェロー
2021年 岐阜大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 講師
2023年 岐阜大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 准教授
2025年11月 三重大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 教授

                                 

【これまでの業績】
2009年に岐阜大学医学部を卒業しました。耳鼻咽喉科の開業医であった父親の影響や、当時岐阜大学耳鼻科の准教授であった水田啓介先生の頭頸部外科手術をみて感銘をうけ、頭頸部外科医になることを志しました。初期研修修了後、当時伊藤八次教授が主宰しておられた岐阜大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室に入局しました。伊藤教授よりがん研究を行って知識を深化させることを勧められ、医師5年目に大学院に入り、京都大学iPS 細胞研究所の山田泰広研究室で4年間国内留学を行い、iPS技術を用いた腫瘍エピゲノムの研究を行いました。特に、組織特異的に生体内初期化を誘導できるマウスモデルを自身で開発し、Kras発がんにエピゲノム変化が必須であることを証明しNature Communications誌に報告することができました(主要論文1)。その後、日本医科大学の小川徹也教授よりご縁を賜り、医師10年目から2年間米国ハーバード大学ダナファーバーがん研究所の頭頸部外科医であるDr.Ravindra Uppaluri研究室に海外留学し、頭頸部がん個別化腫瘍免疫の研究を行いました(主要論文2)。Dr.Uppaluriはネオアジュバント免疫治療の臨床試験であるKeynote-689試験の主導研究者であり、近未来の頭頸部がん治療を間近で体感できる幸運に恵まれました。研究で得た人間関係、体験が非常に楽しく刺激的で、現在まで研究を続けるモチベーションになっています。帰国後は岐阜大学耳鼻咽喉科の小川武則教授に手術技術から医師の心得まで熱心なご指導を賜り、頭頸部再建手術を多数執刀させて頂き難度の高い手術も習得でき、師と環境に恵まれたと感じております。

【今後の抱負】
2025年11月に三重大学耳鼻咽喉・頭頸部外科に赴任いたしました。地方大学病院では頭頸部がんの患者数が多く、診断治療を担当しております。三重県は人口減少、高齢化が進む一方で頭頸部がん、進行がんの症例は増加傾向です。頭頸部がん治療は再建手術など大きな侵襲を伴う治療を行うことが多く、患者さんに十分納得していただき根治性と機能性のバランスがとれた治療を行えるように努めております。最近では頭頸部がん薬物療法が劇的に進化し、他にも光免疫治療やBNCTなど新規治療が多く開発され、最新のエビデンスを考慮し患者さんに最も適した治療を提案、実施できるよう研鑽を続けてまいります。研究面では、最近では特に、最も悪性度の高いがんのひとつである甲状腺未分化がんの未分化転化機構の解明や、新規エピゲノム・遺伝子治療の研究を行っています。三重大学発の研究として、臨床研究に繋げられるよう努力する所存です。また頭頸部がん個別化免疫治療の研究、頭頸部再生治療の研究をしています。研究を通じ疾患をより深くまで理解し、結果に立脚した新規治療を提案することを常に考えています。

若手医師のキャリア支援を積極的に行うことで、医学生からみても魅力ある耳鼻咽喉・頭頸部外科教室をつくり、医局員を増やしていきたいです。地域医療に貢献し、さらに国内外に広く成果を発信できる明るく開けた教室を目指し、日々精進していく所存でございます。今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

【主要論文】

  1. Shibata H, Komura S, Yamada Y. et al. In vivo reprogramming drives Kras induced cancer development. Nat Commun, 9(1), 2081, 2018.
  2. Shibata H, Xu Na, Uppaluri R, et al. Integrating CD4+T cell help for therapeutic cancer vaccination in a preclinical head and neck cancer model. Oncoimmunology, 10(1), 1958589, 2021.
  3. Shibata H, Saito S, Uppaluri R, et al. Immunotherapy for head and neck cancer: a paradigm shift from induction chemotherapy to neoadjuvant immunotherapy. Front Oncol, 11, 727433, 2021.
  4. Sogabe Y, Shibata H, Yamada Y, et al. Characterizing primary and secondary senescence in vivo. Nat Aging, 5(8), 1568-1588, 2025.
  5. Shibata H, Kuroki M, Ogawa T, et al. Head and neck cancer immunotherapy: overcoming limitations and enhancing efficacy. Cancer Sci, 116(11), 2920-2928, 2025.