三重大学医学部免疫学教授就任のあいさつ

免疫学
安間太郎

 2025 年10月1 日付けで、ガバザ・エステバン教授の後任として三重大学基礎医学系講座免疫学の教授に就任しました。この場をお借りして少し自己紹介をさせていただきます。私は三重県四日市市出身で2007年三重大学医学部を卒業し、愛知県の名鉄病院で研修の後、2009年より三重大学に戻り糖尿病内分泌内科で臨床医としての経験を積ませていただきました。当時、糖尿病分野では、現在では中心的な治療薬であるインクレチン関連薬が発売され、大変な注目を集めておりました。糖尿病の病態や薬剤作用機序を分子細胞レベルで理解する必要性を強く感じ、2011年より大学院に入学して免疫学講座で基礎研究を開始しました。大学院修了後の2015年から5年間は免疫学助教として研究や学生教育に関わりました。少しではありますが臨床を経験したことで、学生時代は極めて難解であった免疫学が大変興味深く感じられたのは大きな発見でした。そして代謝内分泌疾患は一般的には免疫学とは遠い分野と思われがちですが、実は極めて関連が深いということを学びました。同じ頃に実臨床で免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が使用されはじめ、癌の治療が飛躍的に進歩しました。一方でICIによる免疫関連有害事象(irAE)として1型糖尿病や内分泌疾患が高頻度に発症することが分かってきました。T細胞に発現するPD-1、CTLA-4等の免疫チェックポイント分子が内分泌疾患の発症に強く関連することは既知であり、免疫学の講義でも扱うのですが、実際に臨床医としてirAEで内分泌疾患が多発することを経験し、基礎研究の実験レベルの話が臨床と強く結びつくことを実感することができました。そうした中、2018年12月にはICIがノーベル賞を受賞し社会的にも大きく注目されることとなりました。免疫学の社会との結びつきや可能性をリアルタイムで実感できたことは自分が目指す進路に大きく影響したと思います。その後、2020年より臨床研修キャリア支援部、2022年より再び糖尿病内分泌内科の所属となりましたが、コロナ禍で病院業務が大変な状況であったにも関わらず、周りの皆様の多大な協力のおかげで多くの基礎研究の時間をとらせていただき研究成果に繋がりました。その中でも線維症マウスの解析により新しい細菌叢由来ペプチドを発見することができ、corisinと命名した本ペプチドの研究が今後様々な分野での共同研究に発展できる可能性を感じております。

 私はこれまで、臨床では主に糖尿病患者の診療を担い、様々な医療職の方とチームで診療を行ってきました。また周囲の理解と支えのお陰で基礎研究を継続することができました。こうした経験から強く感じていることはチームとしてまとまることの大切さです。現在、医学部に求められることは臨床・教育・研究と非常に多岐に渡っております。臨床面では先端的な医療を行うだけでなく地域医療を支えなければなりませんし、教育面では多様な学生のニーズに応えることが求められます。研究面では最新技術についていかなければ勝負できないようになり、技術の習得のみならず、大きい研究費の獲得が必要不可欠です。さらに外部研究費の競争率もますます厳しくなっております。このような状況の中で、単一の講座の限られた人数でそれぞれが臨床・教育・研究のすべてに多くの時間を割くことが現実的に難しく、大きな成果を挙げるためには協力してそれぞれの得意分野を生かす必要があるのではないかと愚考しております。微力ではございますが、学内の基礎、臨床講座の先生方との共同研究を通じて少しでも三重大学の発展に貢献できればと思います。至らぬ点もあるかと存じますが、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。