三重大学医学部胸部心臓血管外科学教授就任のあいさつ
胸部心臓血管外科学
山内孝
このたび令和八年三月より、三重大学大学院医学系研究科胸部心臓血管外科学教授を拝命いたしました。長い歴史と伝統を有する本教室をお預かりすることとなり、その責任の重さに身の引き締まる思いでおります。医学部ニュースをお読みの皆様に、まずはご挨拶申し上げます。
私は平成九年に大阪大学医学部を卒業後、第一外科に入局し、関連施設での研修を経て心臓血管外科医として研鑽を積んでまいりました。大学院では澤芳樹教授のご指導のもと、胸腹部大動脈瘤手術後に生じる遅発性対麻痺(delayed paraplegia)に関する研究に取り組み、学位を取得いたしました。その後は成人心臓大血管外科診療を中心に、ハイリスク症例に対する治療成績向上を一つのテーマとして臨床と研究を続けてまいりました。大阪大学関連施設による多施設共同研究グループ「OSCAR」の立ち上げにも携わり、臨床現場から生まれる課題を研究として形にし、再び診療に還元していくことを目標に活動してまいりました。
また近年は大阪大学心臓血管外科診療局長として、若手外科医の教育体制の整備や関連施設との連携強化に携わる機会を頂きました。外科医志望者が減少する時代において、いかに次世代の外科医を育てていくかという課題に向き合った経験は、今後の教室運営においても大きな財産になると考えております。
三重大学胸部外科は昭和三十二年の講座開設以来、六十年以上にわたり日本の心臓血管外科を牽引してきた歴史ある教室です。草川先生、矢田先生、新保先生をはじめとする歴代教授のもと、先天性心疾患領域を中心に多くの優れた業績を築いてこられました。令和七年四月より呼吸器外科が独立し、新たに胸部心臓血管外科として再編された本教室において、私が初代教授としてその役割を担うこととなりました。こうした歴史の重みを大切に受け止めながら、その伝統を次の時代へ確実につないでいくことが自らの使命であると感じております。
現在、心臓血管外科を取り巻く環境は大きく変化しています。高齢化に伴う症例の高難度化、外科医不足、地域医療体制の維持など、多くの課題があります。しかし一方で、低侵襲治療の進歩や周術期管理の向上など、医療の可能性も着実に広がっています。私は目の前の患者さん一人ひとりに誠実に向き合う臨床を何より大切にしながら、多くの診療科やコメディカルとの連携を深め、地域全体で支える医療体制を築いていきたいと考えております。
今後は三重県における心臓血管外科医療の質の向上を目指すとともに、若い医師が志と誇りを持って成長できる教室づくりに取り組んでまいります。臨床・教育・研究の三つの柱を大切にしながら、多施設連携による臨床研究を推進し、三重から全国へ、さらには世界へと発信できる研究成果を生み出していくことも目標の一つです。地域医療にしっかりと根を張りながら、同時に学術的にも存在感のある教室へと発展させていきたいと考えております。
三重での勤務はこれから始まりますが、多くの先生方から学びながら、地域医療に貢献できる教室づくりに全力で取り組んでまいります。今後とも皆様のご指導、ご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。





